Yuji Chikano

Architect Designer

Yuji Chikano Yuji Chikano
建築デザイナー

近野裕次さん

ここは夢の時を
刻む場所。
デザインを通して、
訪れる人の成長を
支える空間を
めざしました。

ここは夢の時を
刻む場所。

熊本の阿蘇に、漫画を核にしたエンターテインメントの地をコアミックスが計画している。その候補地である高森町を、漫画のシリコンバレーにしたいと思っている。

縁あってこの施設の建築デザインをする機会をいただき、そのようなお話をお聞きしました。そこで、コアミックスの堀江信彦社長に高森町を案内していただきながら、この地に思い描いている未来構想をうかがいました。

日本の漫画を核にしたエンターテインメントを、世界へ発信できる環境を作りたい。
漫画家をめざす若い人たちが、仲間愛を育み、切磋琢磨しながら人間として成長していける場所を阿蘇にも用意したい。さらに、漫画を核としながらも、クリエイティブな表現を志すさまざまなジャンルの若い人たちにもチャンスが与えられるようにしたい。
また、阿蘇に作るのであれば、阿蘇の文化や伝統を感じられるものにしてほしい。

堀江社長の構想をうかがったのち、次の言葉が浮かびました。

「ここは夢の時を刻む場所
日々の夢の積み重ねがカレンダーに刻まれる
やがて学びは楽しみと苦しみを繰り返し
夢は孵化し、姿をあらわし
形となりはばたいていく」

このようなストーリーで施設全体をデザインできればとお伝えしたところ、偶然なことに、当時コアミックスが創立準備をしていた女性歌劇団の名前も、時にちなむものを堀江社長は検討されていたのです。やがて「096区(オクロック)」と名付けられたこの施設は、「夢の時を刻む場所」とすることをめざし、創設が始まりました。

かつて、「一本の木の木陰に座り、大人が子供に語りかけたときに学びが始まる」と聞いたことがあります。そのイメージもあったため、疲れたときは森へ散歩に行き、癒され、調べたいときは知の収蔵庫のような場所へ赴き、学ぶ。そのような、ゆったりした時間を過ごす中で成長できるよう、施設の全体像と建築、ランドスケープの細部をデザインしていきました。

ここ「アーティストビレッジ阿蘇096区」に集い、夢を紡ぎながら過ごした時間は、その人にとって第二の故郷になるはず。それにふさわしい環境を、建築デザインを通して実現できたらと思います。

ちかの・ゆうじ

1958年生まれ。熊本県上天草市出身。大阪工業大学建築学科卒業。建築設計、インテリアデザイン等を行う株式会社スタジオ・テラ代表取締役。設計、デザインの主な仕事に、南青山ライカビル、南青山ドリスヴァンノッテンビル、南青山「H ビューティ& ユース」ビル、坐漁荘のレストラン棟、ジャズ・クラブ「ブルーノート東京」、横浜赤レンガ倉庫の「モーションブルー横浜」など。新規企画・監修・マスタープラン・インテリアデザイン等を手がけた仕事に、「ブルックリンパーラー」などがある。

施設紹介

https://aso096k.jp/the-village/

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