日本で、プロの漫画家として
仕事をするために必要なこと。
編集者との対話や
描くことを通じて、
それが学べます。
monotone_inkさん
オーストラリア
出身
日本で、プロの漫画家として
仕事をするために必要なこと。
編集者との対話や
描くことを通じて、
それが学べます。
オーストラリア
出身
こんなチャンスはめったにないと思ったこと、そしておもしろいと感じたことが理由です。海外で、日本で仕事ができるなんて、まして漫画を描くことを職業にできるなんて思ってもみなかったことでした。友人や家族も、私が日本で活動することを喜んでくれ、応援してくれました。
子どもの頃から日本の漫画が好きで、読んでいました。その特徴は、表現の幅が広いことだと思います。明るいギャグに終始するものもあれば、強烈に暗いシリアスなものもある。さらには、そのグラデーションの中に、さまざまな作品がひしめきあっています。それらに共通しているのは、総じて読みやすく、読者が作品世界に入っていきやすい工夫がされていること。だからこそ、日本の漫画は世界的に人気が出たのだと思います。
いまいちばん好きな日本の漫画は『チェンソーマン』です。ただし、ほかにも『おやすみプンプン』『よつばと!』『ベルセルク』『ドロヘドロ』『女子攻兵』『東京喰種トーキョーグール』など、挙げればきりがないほど好きな作品はあります。
景色の美しい場所です。神社や寺院で見られる古い建造物から、街の中のかわいいカフェ、四季ごとの風景まで、すべてが美しいです。私が日本に着いたときは、ちょうど桜の季節で、現実味がないくらいきれいでした。
一方、阿蘇は現金払いのお店が多いため、母国ではクレジットカード払いが一般的だった私には、その慣習に最初はなじめませんでした。ホットチョコレート1杯を買うのに5分もかかる、そんな私のようにならないよう、買い物はスタッフに相談することをおすすめします(笑)。
漫画を描くにはとてもよい場所だと思います。制作する環境としても、デジタルと手描きの両方ができる設備がそろっていますし、作業机やアトリエの雰囲気など、空間そのものが漫画を描くのに適しています。集中したりリラックスしたりと、自由に切り替えができます。
また、同じ目的を持った他国のアーティストと一緒に仕事ができるのもうれしいですね。漫画を描く仕事には孤独なイメージがありましたが、同業者が近くにいることで、仕事面でかなりサポートし合えます。冗談を言い合って気分転換することもできます。
そして、施設にいるスタッフは思いやりがあり、とても柔軟です。疎外感をおぼえたことはありません。
アーティストビレッジは食事も充実しています。食堂にいる料理人はすばらしく、毎日の食事はいつもおいしいです。寿司、鶏肉の唐揚げ、ラーメンが私は好きです。ほとんどの場合、自分で盛り付けを決めることができるので、予想以上に体重が増えました(笑)。
朝は8時ごろに起床し、住居棟の自室で朝食をとり、出勤の準備をします。時間が許すかぎり、小説を読んだり、聖書の勉強をしたりします。
出勤は10時頃です。私は一日中、施設2階のアトリエで仕事をしています。昼食は12時30分頃、夕食は18時30分頃。その間は机に向かって絵を描いたり、文章を書いたり、時には仕事場に隣接した会議室で編集者と打ち合わせをしたりします。
夕食後、19時過ぎくらいから、比較的自由に行動します。まだ仕事が残っている場合は、続きをします。それ以外のときは、他のアーティストとボードゲームをしたり、試写室で映画を見たり、家でエクササイズをしたり、買い物に行ったりします。
夜遅くには、大切な人に電話し、長めに会話をしています。
また、休日にはゲームをして遊んだり、施設内にあるピアノを弾いたり、仕事をする日とは別のことをして過ごすことが多いです。
漫画家としてのスキルアップのほかに、連載を経験したいです。私は、作家として自分が描きたいことを追求するか、売れて多くの人に読まれるものをめざすか、いつも葛藤しています。しかし、編集者との対話を重ねるうち、その2つは両立できるのではと考えるようになりました。来日し、この環境で漫画を描くことができる以上、商業的な成功をめざした努力も続けていければと思っています。
あなたの人生のタイミングが合えば、ぜひおすすめします。漫画制作を職業とすることに興味があるなら、またとない貴重な機会です。ここにいるスタッフのみなさんは、私たちを歓迎し、惜しみなくサポートしてくれます。彼らと一緒に仕事ができるのは本当に幸せなことです。
「第25回 コミックゼノン漫画大賞」で準入選した、
monotone_inkさんの作品『ペトロフスキーの魔女』はこちら